AIアシスタントのコア・コンセプト

読了。

従来のような画面(ブラウザ)型のインターフェースから、会話型のインターフェースにかわることで、意思決定プロセスやビジネスモデル、データの扱いなどについて図解されている。一つ一つはコンセプトの説明になっているので、気になるトピックだけをつまみぐいもよい。AIアシスタントを使う(ユーザではなく、作る側)上でのとっかかりにはよい本ではないか。この本を読んでも専門家になれるわけではなく、俯瞰するようなイメージを掴むことができる本だった。

以下は、読んでいて気になったところの抜粋。

P.14 AIアシスト機能は、一般的に「個人秘書」の役割を代替するものとしてイメージ・設計されており、現在はユーザーの情報管理を支援する機能として主に実装されています。

P.14 近年、IoT(Internet of Things)や大規模演算処理の高度化にともない、購買履歴や行動履歴などビッグデータを解析することが比較的容易になってきたことから、AIアシスト機能によるユーザー支援も、ユーザーの要望に応じて作業をこなす従来のあり方から、ユーザーの意思決定を促したり、代替したりするものへと進化を続けています。それにしたがい、AIアシスト機能のイメージ・設計も、「個人秘書」から「代理人」へと、その役割を大きく転換させつつあります。

P.20 意欲前/意欲後領域は、購買行動プロセスを念頭に、システム側による同期付けから実際の購買までを、ユーザーによる意欲の認識時点を中心に再記述したものです。つまり、購買行動プロセスを時間軸として捉え、意欲の認識時点を中心に左側を意欲前、右側を意欲後として線形に描いてみるわけです。

P.20 「意欲前領域」は、コマースにとっては未踏の領域です。しかし今後は、AI関連技術のさらなる高度化により、AIアシスト機能がユーザーの潜在的な意欲を引き出すレコメンドを行ったり、ユーザーに代わって購買活動を行うなど、「意欲前領域」に関わる技術が活発に開発されるようになるでしょう。

P.34 サールズ(ドク・サールズ)が概念提起した頃よりもAI関連技術はさらに高度化していることから、私たちは、サールズが提示したVRMモデルを翻案し、AIアシスト機能を実現するための仕組みとして、A2(=AI Assistant)/VRMモデルを概念化したいと考えています。

P.34 A2/VRMモデルの要点は、第一に、PDS(パーソナルデータストア)という概念を導入することで、個人情報の取り扱いに関する機能を具体的に示していることにあります。

P.34 要点の第二は、AIアシスト機能をビジネスとして展開する事業者の立場やサービスを、サールズ同様に「フォースパーティ」として捉えることで明確にできる点が挙げられます。

P.36 VRM(Vender Relationship Management)は、2006年にドク・サールズが『インテンション・エコノミー』で提唱した市場概念です。VRMは、これまで主流であったCRM(Customer Relationship Management)に対抗・刷新するものとして位置付けられています。CRMが統計的なデータを元にマーケティング活動を通じてマス・サービスを提供するモデルであるなら、VRMは、顧客から選択的・自主的に提供された購買履歴などのパーソナルデータの分析を通じて、事業者がその顧客に対して個別にカスタマイズしたサービスを提供するモデルであると言えます。

P.38 VRMモデルは、個々人が自主的に自分のパーソナルデータを運用することを中核にしたモデルです。このモデルにおいて、パーソナルデータを管理する仕組み・概念は、「パーソナルデータストア」(Personal Data Store: PDS)と呼ばれます。こう言ってよければ、パーソナルデータを預け運用するための情報銀行です。PDSは、サービスを利用することで企業に蓄積される購買履歴や行動履歴などのパーソナルデータを一元的に管理することを可能にし、また、私たちが利用したいと望むサービスを提供する企業に対して、自分のパーソナルデータを選択的かつ自主的に提供することを可能にする仕組みであると言えます。PDSは、VRMモデルの始点にして要でもあるのです。

P.64 構造上は「オプトアウト」と呼ばれる方式なのですが、その背景には、私たちの怠惰な性質を逆手に取る「ナッジ」という戦略があるわけです。「ナッジ」は「選択以前の選択」である仕組みや構造、いわばアーキテクチャによって、私たちに特定の「行為選択」をするように促すものなのです。
 「何を選択するか」から「何が選択させるか」への発送の転換が、「意識前領域に関わる分野」には必要とされていると言えます。しかし、こうした手法や考え方は、大きな効果をもたらすからといって、無節操に活用されるべきではありません。私たちには自由があるべきであり、その自由には他者を傷つけない限りで、あえて愚かな選択をする自由も含まれているはずだからです。

P.120 AI関連技術は人間の生活を大きく変えることになるでしょう。そして、それは即時性と帯域拡大の追求に終わりを告知し、新たな方向性を切り開くものになるはずです。そこでは、脳がマシンに接続されることはなく、「マン・マシン・インターフェイス」の新たなデザインがもたらされるかもしれません。私たちは、そんな未来の可能性「アンプラグド・コンセプト」と呼んでいます。

P.122 本書でも述べてきた通り、AI関連技術には、パーソナルデータを活用しながら私たちの意思決定を代行したり、それを促したりするように働くことが期待されます。しかし、そうしたAI関連技術の働きは、何も複数のタスクを同時に処理することに資するだけではありません。むしろ反対に、適切な時間に適切な場所で、必要なタスクだけを私たちが処理できるように仕向けることもできるのです。
 常時接続からの解放という点では、目下の情報化社会が、IoTをはじめとしてさまざまなものをネットに接続しようと試みていることも追い風になるでしょう。こうした方向をさらに推し進め、私たちを取り巻く「環境」そのものを情報端末として拡張すれば、「環境」が私たちをセンシングし、その結果をネット上のAIアシスト機能に送ることで、私たちは身体を拡張することなく、タスクを配分するAIアシスト機能の恩恵に与れるようになるはずです。
 私たちは、こうした構想を「アンプラグド・コンセプト」と定義するとともに、ホモ・デウスとは別様な、もうひとつの未来のビジョンとして提唱したいと思うのです。ここで改めて「アンプラグド・コンセプト」の基本理念を述べるとすれば、それは「常時接続からの解放」ーーつまり身体拡張から環境拡張への転換と、「非注意性盲目の緩和」ーーすなわち複数タスクの同時的な処理から時空間的な再配分への転換であると言えるでしょう。
 ホモ・デウスが身体を拡張するという点で「足し算の思考」であるとするなら、「アンプラグド・コンセプト」は私たち人間の負担を切り下げ、私たちをより自由に、より賢くするための「引き算の思考」であると言えるのです。

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