読了:ドラゴンクエストXを支える技術

ドラゴンクエストXのインフラ的な運用の話ではなく、開発と開発系の運用のお話がたっぷり詰まっていた。どうやって効率化するとか、開発するときに気をつけていることとか。開発寄りの話が多かった。ゲーム独自の部分は、ゲーム開発者にとってはとても役にたつ一つの指標だと思う。物理演算などの高負荷処理の捨て方など。TIPS的なアイデアが多く参考になるのではないか。ゲーム以外の部分だと、開発言語の話やサポートツールの話など、いろいろと参考になる部分がある。

この本でよいのは、実際の大規模なオンラインゲームかつマルチプラットフォームで展開されているドラゴンクエストXのちょっと前の実情を知ることができるという点。なかなかこういう話は出てこないので面白い。イベントに纏わる秘話はリークされるけれど、運営や開発周りの細かいところはなかなかないので、そういうものがまとめられているだけで楽しい。ゲームもイメージできるので、そういうことなのか、と思えるところもあり、楽しく読めた。

運用まわりの話で、気をつけないといけない、と思うところだけ、引用。

P.70 筆者も、『PlayOnline』のベータテスト開始直前だったと思いますが、検証環境において、インターネット経路上で頻繁に破損するTCP通信を経験しました。そのときは、パケットキャプチャ、すなわち実際のパケットのデータを取得して調べました。その結果、TCPのチェックサムは正しいのに、データが壊れていることが確認されたのです。どうやらある通信機器が、パケットの中身を破壊したあとに、ご丁寧にチェックサムを計算しなおして記録していたようです。そのため、壊れているのに壊れていないパケットとして扱われていました。

P.281 「サーバログを1種類追加するくらい大丈夫だろう」という油断もあると思います。というより、筆者自身が油断していました。ドラゴンクエストXの正式サービス開始後、ハングアップの原因で最も多いのがサーバログの追加であることに気付き、以後は慎重に判断するようになりました。

他にも、いろいろと考えさせられるところはあったけれど、運用まわりの部分だけ。障害の原因発見には、経験値からくる感だけではだめで、FACTが重要ということ。思い込みで発見できることもあるが、わからないときは観測して原因を探らないといけないという教訓じゃないだろう。

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